気がつくと時計の針は21時を回っている。久々にオフィスで残業だ
夜のオフィスでエロいことが起きるのは、漫画やドラマの中だけなんだよな。
普段は在宅勤務なので、多少遅くまで仕事をしていても終わったらすぐに夕飯を食べられていた。ゆっくり風呂に入ってダラダラしても、日付が変わる前には布団に潜り込めてしまう。でも、オフィスでの残業となると話は変わってくる。
家につくのは22時を過ぎているだろう。生活リズムは確実に崩れる。
たまには仕方ない。
とはいえ、オフィスでの残業はネガティブなことばかりでもない。
当然エロいことは起こらないけど。
18時を過ぎると、フロアからどんどん人が消えていく。19時、20時と時計の針が進むにつれて、賑やかだったオフィスが静まり返っていく。社員同士の会話や、オンライン会議でなにやら必死に説明している声はなくなり、数人分のタイピング音と空調の音が響いているだけ。
この時間に残っている人達はみんな自分の作業に没頭している。誰にも邪魔されず、深く作業に入り込める時間。会議もないし、誰かに話しかけられることもない。電話も通知もほとんどならない。「生産性が低い」なんて言われがちな残業だけど、こうして集中できる環境は意外と贅沢かもしれない。
窓の外にはレインボーブリッジの明かりが海面に映るのが見えた。さっきまでは夕暮れに染まっていたはずだけど、いつの間にか真っ暗になっている。昼間とはまったく違う夜の東京を眺められるのも、残業の特権だ。
残業のメリットはそれだけではない。帰りの電車が空いている。18時台の帰宅ラッシュと比べると一目瞭然。簡単に座れるほどではないけど、すし詰め状態の車内を耐えるよりも圧倒的に快適だ。
在宅勤務だと仕事とプライベートの境目がどうしてもぼやけてしまう。その結果、この仕事は後で業務時間外にやればいいか、なんて考えて緩みがちだ。古い考えかもしれないけど、オフィスでしっかり頭を働かせる時間も必要なのかもしれない。
残業なんてクソ喰らえってのは本音だ。でも、残業=絶対悪と決めつける必要はない。たとえやらされている仕事でも、何かに没頭する時間というのは意外な心地よさがある。
そんなことに気がつけただけで、もう少し頑張ってみようとか思える。